念願のKunsten Festival des Arts @ Bruxelles

5月14日
雨のパリからブリュッセルへ。世界で最も素晴らしい芸術祭のひとつである(と勝手に筆者が断言する)Kunsten Festival des Arts に一観客として参加するためだ。
2年ほど前にフェスティバルのオフィスにお邪魔してからというものなにかと情報交換のお付き合い。以来、このフェスティバルを実際に体験してみることが夢だったので、それが実現して今日は一人で静かに感動をかみしめた。予想どおり、いや予想以上のフェスティバルがそこにあった。
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まずクンステン、といえばこのビジュアル。毎年黄色と緑の同じグラフィックで勝負。分厚いプログラムにも、ポスターやポストカードにも、フェスティバルのスタッフの名刺にもまあるい穴があいている。この全95ページにも及ぶプログラム(しかも無料!)に世界中の舞台芸術の最新動向が詰っているともいえる。フォーサイスにも無名のアーティストにも同じ見開き2ページを使い、また舞台の写真を一切使用せず、それぞれのアーティストに舞台を喚起させるビジュアルを選んでもらうという画期的なプログラムだけで脱帽ものだ。
また、30以上あるすべてのプログラム、また公演で、原則完全バイリンガル(フランス語-オランダ語)が貫かれている。なるほどベルギーにはフランス語圏とオランダ語圏があり、一国に共存する2つの言語をどちらも尊重するという姿勢。なので、彼らにとっての外国語公演には、フランス語とオランダ語の両方の字幕がつくという徹底ぶり。さらに、すべての出版物には英語が加わりトリリンガル。ベルギー人魂は凄い。

まずはTheatre 140でゲントの演出家の作品を観る。一瞬で駄目だと思うと、最後まで見るの辛いなあ。結構な年齢の演出家なので、スタイルがむちゃむちゃ古い。一発目としては肩透かしをくらった感じでちょっと当惑。
ブリュッセルのはずれにあるTheatre 140から次の公演の国立劇場まで、タクシーをつかまえたいのに他の人に先を越されなかなか捕まえられない私を憐れに思ったのか、若い女性2人組が車で街中まで送ってくれるという。ああここはベルギーなんだななあと感激。人々がとても親切で、おおらか。打算がない! フランスではこういう誘いをしてくれるのは(何らかの下心がある?)男性がメインだからなあ。。。同じフランス語を話すのに、なぜこんなに親切度が違うの??と一人で感激。
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そして新しくオープンしたベルギー国立劇場(↑)(といっても国のサイズに合わせてこじんまりとしていて使い勝手よさそう!)で、ロドリゴ・ガルシアのLa Historia de Ronald El Payaso de Macdonals に挑む。今回はわざわざブリュッセルまで来たのも、この芝居を見るためといって過言ではない。絶対に何がなんでも、今、観たい作品のひとつ。タイトルが示すように、マクドナルドが象徴する大量消費社会、それが抱えるグロテスクな矛盾と限界を、文字どおりグロテスクに舞台化してしまったという、言ってみれば非常に分かりやすい作品である。芝居の始まる前にロドリゴ本人が登場、昨日の上演中に役者が怪我をして今日の公演を中止にしようかどうか迷ったが、若干の変更を加えて上演を強行することにした、というエクスキューズ。やっぱり怪我人が出るほど過激なのか。。。基本的にとてもグロい、というかキタナい。牛乳とケチャップコーラが舞台にぶちまかれ、そこをほぼ全裸でのたうちまわる俳優たち。。。うげえ、エログロではなく、ゲログロ(失礼!)って感じです。3人の男優たちはそれぞれ、14歳のころに体験したマクドナルトとの出会い、思い出を語りだす。前半はちょっと分かりやすさ、直球さが気になってしまったが、芝居が進むにつれてこの分りやすさが戦略的に行われてることがよく分ってくる。舞台にぶちまかれ続ける大量の液体や食品、洗剤、よく分らない物々・・・(個人的にはこういうの本当に苦手・・・うげ)。う○こを使って説明される家族の歴史。突然役者の本当の家族が舞台に上がり、極めて脱力した非演劇的な状態のまま芝居は続行される。映像も強い。この辺のプラスティックなセンスはずば抜けて良いのは、さすがロドリゴ・ガルシア。そしてアウシュビッツやヒロシマといった20世紀に人類が作りあげた大量虐殺と大量消費という二つのシステムを延長線上に結んでいく。無数の死体と舞台上の大量消費商品のまぜこぜのゲロゲロが重ねられる。最後のシーン、映像の中では3人の役者がマクドナルドのピエロに扮しピクニックへ出かける。バーベキューで燃やされているのは、プルースト、ランボー、ガルシア・マルケス、ゲーテ・・・マクドナルド文化の対極にある書物。こんがり焼けた書物に、ケチャップやマヨネーズをかけるピエロたち。
いやあ、このラディカル×スカトロジック×過激に熱い芝居、意見は真っ二つに割れるだろうが筆者は生理的嫌悪を超えて120パーセント支持。素晴らしい。
興奮冷めやらぬままフェスティバルセンターへ。なんとAAPAFでも何度も御一緒し3月にはTIFのゲストとして日本にも来てもらったSPAF(ソウル舞台芸術祭)の金ディレクターと海外担当のクレアさんに再会。3人で南アフリカのパフォーマンスグループのアフロ・ショーで踊ったり・・なんか2ヶ月前の東京のようでした。フェスティバルのカフェはこんな感じです(↓)。
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by smacks | 2005-05-14 23:04 | ■クンステン・フェス05-06