迂回プリーズ

怒涛のソウルから戻りとにかく寝たが、全く疲れがとれず。猛烈に、疲労&腰痛に悩まされる・・・これをまさに「トシ」というのでしょうか。

にしすがも創造舎では、7日よりANJプロデュースの「サーカス物語」を公演中。
なんと満員御礼どころか、当日券も完売、立ち見続出という、嬉しい悲鳴状態に。

そして、イデビアン・クルー新作公演「迂回プリーズ」@パークタワーホールの最終日へ滑り込む。
これが、実に素晴らしい出来で、楽しくも社会性たっぷり、突出した舞台だった。
音楽、照明、舞台美術、宣伝美術・・・すべて無駄なくセンスが光る。そして踊っている井手さんを見ることの至福。ダンサーたちも、実に好演。

しかし立ち見だったため、腰痛は悪化・・・
# by smacks | 2005-10-09 22:36 | ■演劇・ダンス系

SINSFO Seoul International Networking Seminar for Festival Organizers  ソウル芸術文化財団という、2004年に設立されたソウル市の財団が主催するシンポジウムに参加。これは、去年筆者が遭遇した「怒涛のソウル滞在22時間」の元凶(失礼)ともなったセミナーシリーズの第二弾である。

今日のお題は「Role and Vision of Performing Arts Market to Encourage Artistic Creativity - Concept of Performing Arts Markets : History and Identity (ながっ!)」

こういうテーマの席に、こういうパネリストを呼ぶのは一体どういう意図があるのか? いや単なる無知のなせる技か? 主催者側のすっとんきょうなキャスティングが、幸か不幸かシンポジウムに劇的な効果を演出することとなった。
ヨーロッパからの参加者は、アヴィニオン演劇祭の前ディレクター、Bernard D'Arcier、ウィーン市立劇場の Airan Berg、筆者の崇拝するベルギーのKunsten Festival des Arts のディレクター、Frie Lrysen という、まさにヨーロッパ舞台芸術界の最先端をひた走ってきた人々。彼らにとって、作品(=プロダクト)とは自らの劇場やフェスティバルが生み出す(プロデュースする)ものであり、それを発表し、巡回させる場(=市場)はフェスティバルや劇場そのものである。売り手も買い手も、そこに集まる。そこが、芸術に関する出会いと議論の場となる。
北米、カナダからの参加者は、ケベックのCINARディレクターのAlain Pare、プロデューサーのUriel Luft。彼らは、未だに「見本市」という制度を信じてやまず、見本市の必要性と有効性を切々と説く。そして、北米のみならず、東京、ソウル、シンガポール、インドネシア、そして南アフリカなどの芸術見本市と強いネットワークを構築し、そのアドバイザー的な立場から見本市での作品の流通とプロフェッショナルの出会いを生み出そうと画策している。(実際、今回の第一回ソウル芸術見本市は、彼らの仕掛けの産物といっていい。)

いやあもうなんというか、哀しいほど議論はもちろんかみ合わず。それもそのはず。事前の打合せは一切ないし、筆者だっていきなり壇上に乗せられてなんかしゃべれと言われても「いやあ・・・東京芸術見本市(TPAM)の方々をこの席に御招待したほうがいいんじゃないですかあ」的なことをコメントするくらいしかできず。会場からは「ワールドカップのように、日本と韓国と共催にすればいいのでは」という意見まで飛び出す始末。もう勝手にしてくれ・・

フリー・レイソンが「私は見本市というものに全く興味がない。私は、アーティストが生み出した作品をそれに相応しいコンディションで観たいのであって、見本市のショーケースの中で抜粋を見たいわけではない。また、その作品がどのようなコンテクストで、なぜ生まれているのか、ということを知りたい。私はアーティストと対話がしたいのであって、そのマネージャーと先に値段の交渉をしたいのではない」と豪語したのには、会場からも大きな拍手が巻き起こっていた。さすがだ。ソウル見本市のメインスポンサーであるソウル芸術文化財団主催のシンポジウムの席で、ここまで言えるラディカルかつ勇気ある彼女が、私は大好きだ。

しかし、それにしてもこのセミナーで我々が見たものは、アメリカ型の舞台芸術と、ヨーロッパ型の舞台芸術の、劇的な対立だった。舞台芸術を巡る、ひいてはアートそのものを巡る鮮明な考え方、それに基づく制度の違いが噴出したといっていい。

そして日本はどうなのか?見本市が誰のために必要なのかを再度考える時期に来ていることは確かだろう。出展団体=アーティストからさえ出展料をとって、必ずしも日本の舞台芸術を象徴しているわけではない団体のブースがランダムに並ぶ不思議な公平性を、誰がなぜ必要とするのか? などなどと考えはじめたら頭がウニ状態になり、午前中から猛烈に疲労してしまった。

うーん、去年に引き続き、SINSFOへの謎と疲労は深まるばかりだ・・・
# by smacks | 2005-10-07 22:29 | ■アジア出張

ソウル芸術見本市PAMS。個人的に見本市という場はあまり好きではないのだが、APPAFの理事会とのパッキングになっていて、諸々の事情により出ないわけにもゆかず。
今回が第一回目ということで、どんなことになっているのかという若干の興味もあり。日本からは東京舞台芸術見本市(TPAM)と国際交流基金のブースがあり、筆者も日本から来ていた関係者に混ざって若干のお手伝い。
開会式。韓国の文化観光省大臣やら舞台芸術関係者やらテレビ局やらが集まり、華々しいテープカットが行われる。ま、まるで新幹線が開通するようだ。そして驚くべきことに、国立劇場の広場に建てられた、オープンエアのブースたち。むー。
ソウル出張3日目:ソウル芸術見本市_b0028579_2241214.jpg

関係者曰く、総予算1億円。来年度は1億5000万円になる予定。そのほとんどが韓国文化韓国省からの予算。つまり、国がオーナーとなり、民間組織が運営をしているという企画なのだ。たった3日間のイベントに1億円。。。。ブースとショーケースだけで、1億円。。。。むむー。

ショーケースもいくつか観たが、問題は、いろんなジャンルのものをごった煮のように見せているため、中にはクラシック・バレーもどきや伝統音楽もあり、いったいどういう基準で選んでいるのか、謎としか言いようのない状態。

あまりにも気分優れず、ソウル・フリンジフェスティバルのディレクターの李くんとテハンノへチゲを食べに。ここで、韓国政府の文化政策、ソウル市の文化政策、また韓国舞台芸術界の錯綜した人間関係やら対立関係やらをご講義いただく。むー。やっぱりどこもかしこもシガラミの世界なのね。。。何をやっても批判の的になるのは万国共通として、韓国を外から見ている筆者としては、そのエネルギーには脱帽するものの、実際問題として、それが本当に力ある作品へと昇華していない現実がなんとももったいないと思うのだ。テハンノの劇場は若い観客で溢れ、ほぼ皆が徹夜で徹夜で仕事をしているという謎のエネルギーに溢れ、しかも公的資金がどどーんとアートに流れようとしている中で、一歩間違えると、観光誘致のイベント主義に終わる危険が、とても大きいように見える。まるで、日本のバブル期、腐るほどの文化施設がビジョンとプロジェクトなく建てられてしまったように。

夜、チェーホフの「桜の園」の翻案作品を観る。舞台は1945年、日本占領からの解放の混乱期。東京から戻ってくる一人の女性とその家族を描く。シンプルながら考えつくされた舞台装置。役者は皆、新劇っぽい演技だが(だから?)とてもうまい。とても良くできた、まさにウェルメイドの舞台だった。
# by smacks | 2005-10-06 22:02 | ■アジア出張

朝からAAPAF(Association of Asian Performing Arts Festival アジア舞台芸術祭連盟)の理事会。うー、眠い。そして東京よりは格段に寒いソウルで、風邪気味。。。
午後はAAPAFのプロジェクト・シェアリング。それぞれのフェスティバルが未来に企画中のプロジェクトに関してプレゼンを行い、パートナーを募集するという時間。一番バッターに任命された筆者は、TIF06のプログラムの紹介と、中でもスレイマン・アルバッサームの新作「カリラ・ワ・ディムナ」のコ・プロデュースを募る。他のフェスティバルも、なかなか面白そうな企画を用意しているよう。

夜は「テロリスト」という芝居を見る。04年に書かれ韓国の主要な戯曲賞を得た話題作。今回は脚本家自らが演出しているが、既に他の演出家による舞台も上演されたそう。古今東西の様々な革命を起こした偉人の日常を断片的に描き、彼らがその時代にはテロリストと呼ばれ、所謂テロ行為を行っていたことを、コミカルに描く作品。役者はかなりうまいと思うのだが、どうも演出がやや過剰サービスというか、小劇場系エンターテイメントというか。分りやすくしてしまう傾向。
# by smacks | 2005-10-05 23:00 | ■アジア出張

SPAFのメイン会場のカフェで、ファーデルを発見。
照明と音響のテクニカル・スタッフといるなんて、珍しいなあ~と思いつつ久々の再会を喜ぶ。と、スタッフたちは、筆者の登場を千載一遇のチャンスとばかりさーっと何気なく消えていってしまった。やっぱり、またくどくどとダメ出ししてたんだ。。おっさん変わってないなあ。

どうも一昨日の初日、字幕が大失敗し、ひともんちゃくあったらしい。それがよくよく聞くと、筆者がソウル側に送った脚本、つまり字幕原稿ではなく、スクリプトそのものを、律儀に翻訳者が全部訳し、それをプロジェクターで全部見せようとしたらしい。しかも、オペレーターは素人、ゲネプロなし。そりゃうまくいくわけないじゃん・・・しかも彼らは、何かにつけTIFと比較し、「東京では問題なくできたのに、ソウルではなぜできない」的なことを言っていたらしい。。。おいおい。

という不満不平を、チュニジア側、ソウル側双方から別々に、切々と聞かされる筆者。ああ、「もめる」ってこういうことなのね・・・

観劇中は、観客の10パーセント~15パーセントは途中で席を立ったが、最後まで残った観客たちは、会場総立ちのスタンディング・オベーションと共に熱狂的に迎えていた。東京経由で、この素晴らしい作品がソウルの若い世代にも絶大なインパクトを残したことを、今更ながら嬉しく思った。また、今夜の公演がジュヌンの最終公演ということで、その最後にも立ち会えて感無量。

パフォーマンス後はいつものフェスティバルカフェで、チュニジアの人々と宴会。しかし、ここでも、役者やテクニカル・スタッフはファーデルがいるため寄り着かず・・・筆者は例のごとくファーデルにつかまり、人生について、指導される。。。
ソウル出張1日目:「ジュヌン」再び in ソウル_b0028579_2332510.jpg

チュニジアの二人の大女優と、演出家ファーデル・ジャイビと、韓国のジュヌン翻訳家の方。(韓国語でジュヌンの戯曲を出版するそうです)
# by smacks | 2005-10-04 22:57 | ■アジア出張