smacks dialy

日々の仕事のこと、観劇・鑑賞記録、出張報告など、国内外の舞台芸術を中心としたアートおよびアートマネジメント全般がテーマです。
by smacks
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メリークリスマス from 聖地ベツレヘム

メリー・クリスマス。それは2005年前にイエス・キリストが生まれた日。

イエス・キリストの生まれた場所、ベツレヘム(在・パレスチナ暫定自治区)の生誕教会へ行ったのは今月8日。

「ここがイエスの生まれた厩のあったところ」と連れて行ったもらった場所はこちら。ベツレヘムの生誕教会内部。

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2000年ほどまえイエス・キリストはベツレヘムで生まれたとされる。
そして今、イエスが生まれたベツレヘムは、イスラエルによる占領下に置かれている。
住民のほとんどはアラブ人のクリスチャン。つまり、アラビア語で聖書を読んでいる人々である。アラビア語といえばコーランを読んでいるイメージが強いが、このイエスが生まれた地には今でも多くのクリスチャン、とくにギリシャ正教徒が生活している。

そして、忘れないでほしい。この地の周辺は今、このような壁で囲まれていることを。
筆者が目撃したこれらのベツレヘムの壁は、ほんの2週間前に筆者によって撮影されたものである。

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遠近法で壁が筆者の身長くらいに見えますが、実際にはかなり離れた場所から撮影しています。実際の高さは8メートルあまり。
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by smacks | 2005-12-24 02:20 | ■TIF06-イスラエル

検問所 in 巣鴨

寒い。。。が、今日も張り切って自転車通勤。

23時半オフィスを出る。ロングコートに帽子を被ってチャリンコをこぐ筆者の姿を見た同僚が、別れ際、「そんな格好で職務尋問されたりしないの?」と心配してくれた。そんなまさか。

と思いながら、帰宅途中、巣鴨→駒込にいたる六儀園のあたり(このへんはかなりの高級住宅街)を通過中、警官2名に止められる。「はーい止まって!自転車検問です~」

防犯登録はしていたのだが、何しろ買ったばかりなので登録番号が滝野川署で照会できず・・・怪しまれる。「いい自転車ですね、これ折りたたみ?」などと質問してくるおまわりさんに、「いや、これディスカウントショップで買ったんですけど」などと、どうでもよいことを答えたり。

結局開放してもらえたが。「自転車検問」、どきどきの初体験でした。悪いことはしていないのに妙にどきどきするものだ。
しかし最近、よく検問所で止められるなあ。。。イスラエルの某所でも。。。
by smacks | 2005-12-22 18:38 | ■その他もろもろ

自転車通勤

このところどう考えても気候条件がキビシイ。特に筆者の勤める西巣鴨は、ちかごろの寒波が身にしみて感じられる。建物のせいか、気分のせいか。時々オフィスで、雨ニモマケズ、風ニモマケズ・・・と詠いたくなる。どうでもいいが、宮澤賢治は筆者の出身高校の先輩だったりする。

そんな極寒の昨今、ふと思い立ち、自転車を買った。自転車通勤を始めた。高校時代、皆が自転車で通う距離をこぎとおすことができず自転車に乗れないヤツだとさえ思われがちだった筆者が。人生で乗り物を自分で買ったのはこれが2回目のこと。最初は、仏に留学中に買った「トロチネット」。一時期はやった、キックボードとかゆう足で道路をキックしながら進む子供の乗り物で、これもなぜか猛烈に寒い時期にリヨンの町を乗り回したくなり、買ったのだった。

自転車通勤、ドアtoドアで15分。(もともと電車で通っても近所) 家を出てすぐの坂道がしんどいことと、巣鴨付近では歩道にたまる老人たちをよけるのが大変なこと以外は、とても快適な通勤だ。帰宅も楽しい。寒いことが、それほど苦にならないのは自分でも意外だった。何より、外の空気に思い切りあたることができて、脳の中がちゃんと「干される」感じが最高に気持ちよい。

寒サニマケズ。心を強くもって、自転車で通い続けたい。
by smacks | 2005-12-21 23:46 | ■その他もろもろ

横浜トリエンナーレ、再び

年甲斐もなく(?)PortBの打ち上げに朝まで参加。
そのまま横浜トリエンナーレに行くと旅立っていった若者たちを見送り、自宅で爆睡した後、午後から横浜トリエンナーレへ。オープン時に行って以来。

明日が最終日ということもあり、予想以上に人が大勢来ていて、とても賑わっていた。高嶺氏の作品の前では50分待ちの長蛇の列。子供も多く、猛烈な寒さにも関わらず、人々は楽しそうだった。

今回の横浜トリエンナーレで生まれたすべてのものが、3年後の横浜トリエンナーレに繋がっていって欲しいと、心から思う。
by smacks | 2005-12-17 01:56 | ■美術系

[告知]Re:Re:Re:place 隅田川と古隅田川の行方(不明)

日本には1週間ほど前に戻ってきているのですが、ブログ更新が追いつかず。イスラエル報告は追って更新するとして、とりあえず目下の宣伝します。

演出家・高山明率いる演劇ユニットPort Bの公演が昨日初日を迎えました。ANJ同僚の聖子嬢が制作を担当。筆者も受付におります。いらっしゃる方は電話で筆者の携帯までご連絡ください。明日まで。いそげいそげ。

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■Port B/ポルト・ビー <都市の肖像シリーズVol.1.>
『Re:Re:Re:place 隅田川と古隅田川の行方(不明)』

にしすがも創造舎を拠点に約4ヶ月の創作期間を経て、
今、二つの隅田川を巡る都市の記憶が浮かび上がります。
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ドイツで演劇の研鑽を積んだ、気鋭の演出家・高山明が率いる、
Port B(ポルト・ビー)。文学・哲学・歴史・地史などのテキスト読解と、
土地の人々へのインタビューやフィールドワークを時間をかけて丁寧に行い、
そこから見えてくる都市の相貌を演劇化する試みが、
<都市の肖像シリーズ>です。

Vol.0.では、板橋の高島平団地を材にとり『Museum:Zero Hour~J.L.ボルヘス
と都市の記憶』を上演、続く第二弾の舞台は「隅田川/古隅田川」です。

会場は隅田川沿岸に聳え立つ、F・スタルク設計の「アサヒアートスクエア」。
てっぺんの「炎のオブジェ」(只今お色直し中)はあまりにも有名ですが、
そこからのインスピレーション、そして、謡曲「隅田川」に想を得て、
作品づくりをスタート。フィールドワークを重ねる中で、埼玉県の春日部に
「古隅田川」が今も流れていること、東武鉄道の社史、また、鐘ヶ淵紡績
(現(株)カネボウ)の変遷など、興味深い膨大な資料が集まりました。

舞台には、PortBパフォーマー陣に加え、双子姉妹の歌い手、生まれも育ちも
隅田川周辺のおばあさん、東武鉄道で働いてきた人、古隅田川を遊び場にして
きた人、鐘ヶ淵の町会長…、などが“レディ・メイドのパフォーマー”として、
登場。また、梅若塚ゆかりの寺の住職の語り、都市を行き交う人々の声も
交えられます。

産業革命とともに紡績と鉄道がさまざまな"糸"と"線"を川筋に交錯させてゆく
この土地に、吸い込まれていった無数のウメワカ(梅若/埋若)丸の、
さて行方やいかに・・・

Port B ウェブサイト
http://portb.zone.ne.jp/
by smacks | 2005-12-15 15:54 | ■その他もろもろ

ひとりひとりのホロコースト

寝不足が続き、もはや体力は限界に。
が、プログラムは朝9時から、びっちり。。。。ねむい。
朝一番。巨大なバスステーションとショッピングセンターのコンプレックスの中にあるBamat Meizag という劇場で、Ensemble 209というアーティスト集団のパフォーマンスを観る。舞台は卓球台。観客は卓球台に囲まれる形で、360度回転で観る形。所謂「インターディシプリナリーなパフォーマンス」というものにありあちな、思わせぶりな映像やら身振りやら音楽やらインプロビゼーションやら配布物やら、なんやらかんやらやたらごちゃまぜのパフォーマンスだった。

次にZ.O.A Houseという劇場で、Mezrich という芝居を観る。Mezricというポーランドの町で、1万8000人いたユダヤ人のうち、ナチの手を逃れた数名のユダヤ人たちが、高さ70センチしかない屋根裏で生き残りをかけて暮らしている、その13ヶ月を描いた物語。舞台の上でも俳優は這ったりかがんだり、一度も立ち上がることなく物語は進む。昨日のゲッシャー劇場に続き、正真正銘のホロコースト芝居である。とても丁寧なつくりで、役者もうまい。テキストも、屋根裏で生き延びようとする当時のユダヤ人たちの葛藤がとてもうまく描かれている。恐らく学校との提携を行っているのだろう、観客の多くは若者で、観終わった後には多くの人が目を赤くはらしていた。

しかし、なぜ未だにホロコースト芝居なのか? エラン・バニエルは言った。答えは2つ。「それぞれが、それぞれのホロコーストを生きている。ホロコーストが起こったのは60年前だが、それぞれのユダヤ人が、どのようにホロコーストと向き合い、自分の中でその体験を生きるか。この作業に、決して時間は関係ない。そのためにこの作品のような芝居が常に必要とされている。」もうひとつの答えは「とても穿った見方をすれば、ホロコーストを題材にすれば、芝居そのものの質よりも史実が勝るから、それだけで物語として成り立ってしまうし、海外向けにもセールスしやすい。ホロコーストという現実が凄すぎて、誰もホロコーストを語るユダヤ人には文句を言えないし、辛らつな批評も躊躇してしまう」 

Tmuna 劇場に戻り、Victoria Hanna という、若い女性アーティストによるボイス・パフォーマンス。父親はユダヤ教のラビ、極めて宗教的なバックグラウンドを持つ。シャーマン風のルックスと演劇性を兼ね備えた驚異的なボイスパフォーマンスは、インパクト大。既に来日公演もしているそう。来年6月にはシンガポール・アーツフェスティバルにも招待されているそう。

引き続きTmuna 劇場にて、Hangerという芝居を観る。イスラエルの「ベスト・フリンジ賞」を受賞した作品。つくりも内容も、どっぷり小劇場という感じ。テキストがイマイチ。

続いてハビマ国立劇場にて、TAXIという芝居を観る。ヤスミン・ゴデールのドラマトゥルクで、テルアビブで民間の演劇スクールを主宰しているイツィクも生徒たちを連れて来ていた。テルアビブのナイトクラブで繰り広げらる若い男女(タクシードライバー、DJ,ホモセクシュアル、デブの娼婦などなど)の狂騒、セックス、恋愛を描く芝居。観客のほとんどは10代から20代前半の学生で、セックス以外の何物でもないシーンではどよめきや喜びの声があがるほどの思春期状態。。。なんかなああ、、、、これは先ほどのホロコースト芝居の対極をいく、現実逃避芝居かも。しかしこれまたこんな芝居を学校と提携して若者に見せているのだから、イスラエルは不思議な国である。高校を卒業したら兵役に行かなければならない高校生たちに、国立劇場では連続セックスシーンばかりの青春芝居を見せているという。。。

1日に5本のフルプロダクションをこなし、さすがに意識朦朧・・・これで4日間のイスラエル演劇エクスポージャーのプログラムは終了。演劇を最後まで見たのは日本人では筆者一人だったが、それをするだけの価値のある素晴らしく濃密なプログラムだった。エラン・バニエルに大感謝をしながら別れを告げ、夜、一人タクシーでエルサレムに向かった。
by smacks | 2005-12-08 23:46 | ■TIF06-イスラエル

イスラエルのロシア語劇場?

眠い。しかし朝9時にはプログラムは再開する。
今日も文字どうり朝から晩まで観劇、観劇、また観劇。日本語でもきついが、芝居はヘブライ語、そして字幕は英語。体力の消耗が激しい。

昼と夜にはちゃんと食事が出るのだが、パン、野菜、果物中心で、おいしいのだが、やはり肉や温かい汁物が食べたくなってきた。

今日の最後の芝居は、ジャッファにあるゲッシャー劇場。ここはロシアの移民が中心となって作ったとても古い劇場で、なんとロシア字幕つきの芝居をやっている。今日見た芝居も、外人用の英語字幕と、ロシア語字幕が並んでいた。大型バスが何台か来ているところを見ると、どこかの入植地ごと観客ツアーを企画しているに違いない。ヘブライ語ができないロシアからの移民にとって、ロシア語字幕つきで見れる絶好の機会に違いない。しかし観客はやたら年配の人が多い。ことによったらホロコーストの生き残りではというほど年配の人も。そして芝居の中身は、まさにホロコーストを扱ったものだった。

終了後、近くのクラブバー「サルーナ」で、ヨーロッパからの演劇関係者と飲むこと、また日付が変わるまで。。。
by smacks | 2005-12-07 23:05 | ■TIF06-イスラエル

エルサレム再訪-ダビデの星

朝8時30分。エルサレム方向へ、一同出発。今回のTheatre Exposure には世界各国から30~40名ほどの演劇関係者が参加している。

10時。Zik という野外パフォーマンス集団のアトリエを訪れる。巨大な木製のセミを野外に設営、花火でぶっ放すというパフォーマンス映像などを観る。こ、これはまさにイスラエル版ロワイヤル・ド・リュックス。と思っていたら、やはり既にコラボしていたことが判明。一緒に参加していた某横浜市関係者のお方が、「横浜(&横浜トリエンナーレ)にぴったりだね」と一言。

11時30分。The Lab という、もと工場跡地をリノベした新しい劇場。ディレクターの女性、これまでアッコ演劇祭やハーン劇場のディレクターも努めた超やり手だが、そのすべてを捨てて、この新しい劇場で新しい試みをするためにやってきたという。その第一弾のプロジェクトが、2004年12月にここで初演されたヤスミン・ゴデールの「ストロベリークリームと火薬」だったそうだ。偶然的必然。また既存のアートの枠組みに捉われず実験的なことをやろうという姿勢、海外のカウンターパートとの共同製作に積極的に取り組む姿勢が伝わるプログラミング。今後が楽しみの劇場だ。
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The Labで立て続けに、ダンス、音楽、映像、マリオネットなどを取り入れたパフォーマンスを4本、また制作中の新作のプレゼンを1本。

その中でダントツにすごかったパフォーマンスが、スマダール・ヤーロンという女性アーティストによる"Wishuponastar"という作品。解体すると「Wish up on a star」となる。そのStarとは、ずばりダビデの星。
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ホロコーストを生き延びた両親に生まれ、ダビデの星に永遠の愛を誓い、ダビデの星と交わり、ダビデの子=メシアを生み、2000年におよぶユダヤ民族離散の歴史にピリオドを打とうとする女性が、イスラエル礼賛、ナショナリズムに至るモノローグを、体を張ったパフォーマンスで体現。何しろパフォーマー、ダビデの星にまたがって空中浮遊する!しかも本当にダビデの星と交わってしまう。。。 しかも音楽ばバリバリのワーグナー!
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そこまでやって大丈夫?とこちらが心配になるほど、過激でラジカルなパフォーマンス、背筋がぞくぞくした。この作品が、ドイツのベルリン演劇祭が共同製作、初演したということ事態、凄すぎ。ドイツ恐るべし。そもそもこんなパフォーマンスがイスラエル外務省公式の演劇プログラムに入っていること自体、外部の我々にとっては驚異的だが、世界一の「民主国家」を標榜してやまないイスラエルにおいて、内容はどうであれ芸術活動を弾圧することなど国家のプライドが許さないらしい。まさに、国のスタンスはお隣レバノンなど検閲が大手を振っているアラブ諸国と対極。。。

また、午後にはささやかながらエルサレム市内観光も用意されていた。1年前はハナに案内してもらったエルサレム、全く同じ観光名所(聖墳墓教会、アラブ地区のスークなど)を、また違う角度から紹介される。前回見られなかった嘆きの壁の前にも立つことができた。
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エラン・バニエル氏が「折角エルサレムにいるんだから、ジョージに電話して、ここまで来てもらうよ」と言ってくれる。うーん、なんて懐の広い。しかしあいにく昨日のネタニヤでのテロのため、ラマラとエルサレムの間の検問所は閉鎖されており、実現せずに終わった。会いたい人に、会いたいときに、会えない。そういうことが、ここでは日常茶飯事なのだ。

夜。グループより一足先に、先ほどの過激なパフォーマンスの照明をやっていたジャッキーさんの車でテルアビブに戻る。ジャッキーはヤスミンの照明や舞台監督もやっていて、イスラエルのメジャーアーティスト御用達の技術者兼照明デザイナーである。実は奥様が、日本の誇るダンサー、大野千里さん。ジャッキーの両親は二人ともイラク出身であり、アラブ文化は彼にとっても近い存在。文化としてのアラブ、宗教としてのユダヤといった多重のアイデンティティは、イスラエル人なら誰でも持っている。しかし、国家としてのイスラエルというアイデンティティが他者を排斥することで強調されることに異を唱え、国家の過ちを客観的に分析するジャッキーのようなイスラエル人が、少なくとも筆者がここ数日に出会った芸術関係者には少なくないということが救いだ。「ガザ撤退はパフォーマンスだ。状況はガザ撤退以後双方ともさらに悪くなっている。全く希望が持てない。この国はこのままいけばいつかまた滅び、消える」。
テルアビブに戻り、ヤスミン、ドラマトトゥルクのイツィクとも合流。夜10時過ぎから、舞台設計のミーティング。結局日付が変わるまで議論は続いた。
by smacks | 2005-12-06 23:41 | ■TIF06-イスラエル

クレイジーな国の、クレイジーな現実

今日から演劇プログラムが始まる。今回のTheatre Exposure のプログラム・ディレクター、エラン・バニエル氏は、90年代にあのパレスチナのアルカサバ・シアターのディレクター、ジョージ・イブラヒムと共にパレスチナ・イスラエル共同製作作品「ロミオとジュリエット」を演出した演出家としてのキャリアを持つ方。当然ジョージとは今でも「やあ元気?」と携帯電話で連絡を取り合える仲。その後、エルサレムのハーン劇場、アッコ演劇祭などのディレクターを務め、またヤスミン・ゴデールやインバル・ピントなどイスラエルの若手振付家に創作と発表の機会を与えてきた功績はとても大きい。そんなバニエル氏によるチョイスだけあり、おのずと期待も膨らむ。

ダンス・プログラムとはまったく違った仕切りで、海外からの総勢30名ほどの招聘者をまとめてバスに乗せて各劇場へ訪問、観劇するスタイル。
最初は今回の招聘元であるイスラエル外務省の方の挨拶。「このクレイジーな国の、このクレイジーな現実を反映した演劇を、ぜひご堪能あれ」。。。外務省の官僚にしてはシニカルユーモアたっぷりなスピーチで、ますます期待が膨らむ。

10時。クリッパ・シアター。日本にも何度か来ている、舞踏系のフィジカル・シアター。
11時。演劇評論家による、イスラエル演劇に関するレクチャー。ニューヨーク仕込みの英語は早かったが、とても分りやすく整理され、これからの観劇の傾向と対策まで教えてくれる素晴らしい講義。

お昼。テルアビブ市が誇るレパートリーシアター、カメリ劇場へ。
14時。「プロンター」観劇@カメリ劇場。まだ20代後半の若い女性演出家ヤエル・ローエンによる作・演出。イスラエル人とパレスチナ人、ユダヤ人とアラブ人が混成する若い俳優やスタッフによるコラボ作品という。劇場に入る入り口では、チケットもぎりの代わりに、イスラエル兵の格好をして銃を下げた俳優たちが、観客ひとりひとりのパスポートチェックを行う。(筆者、一瞬自分のパスポートでは劇場にいれてもらえないのではと焦る。)
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まさに検問所。そして舞台美術は、なんと壁! やはりキャスターでパーツごとに移動可能な、我々の「壁」にそっくりな舞台美術に思わずのけぞる。芝居は、第2次インティファーダ以降のイスラエル・パレスチナ問題を日常として生きなければならない人々の、双方のロジック、双方の悲劇、双方の矛盾が次々と場面をかえて描かれていく。壁によって生活が分断された家族、子供をイスラエル兵に殺された夫婦、自爆テロにおびえアラブ人を疑うバスの乗客たち、兵役に行くのを拒み家のベットから離れられない若者・・・・などなど。極めてリアルな問題を、とりあえず全部舞台に乗せてみたという、フレッシュで正直な演出は、時としてやや稚拙でこなれていない印象を受けるが、それにしてもとても勇気のある作品、そして観るものの心に強烈なインパクトを与える作品だったことは確かだ。しかも作品はアラビア語、ヘブライ語がそれぞれ字幕表記される徹底ぶり。しょっぱなから相当面白くなってきた。

16時30分。「ハムレット」観劇@カメリ劇場。もともカメリ劇場はテルアビブ市立のレパートリーシアターだが、05-06年のレパートリーの看板のひとつが、このヘブライ語新訳による「ハムレット」。これが驚くほど素晴らしい舞台だった。カメリ劇場の看板俳優たちの演技は卓越していて、とくにハムレットを演じている彼の演技は最高。今までに知るどんな「ハムレット」よりもインパクト大。ダッフルコートにジーンズ、プーマのスニーカー、でもってソニーのヘッドフォンをぶら下げてテクノを聞きまくる。360度回転式のイスに座った200名ほどの観客は、イスでくるくる回りながら、四方八方で行われる舞台を追うことができる。またテキストはシェイクスピアの原文に忠実でありながら、演出によってここがイスラエルという場所であることを強烈に意識させる仕掛けが要所要所に散りばめられている。クローディアスは最後、王座ではなく演説台の上でマイクを口に突っ込まれ死亡、すべての悲劇の後にやってくるフォーティンブラスはイスラエル軍としか見えない軍服を着ている始末。。。

ディナー・レセプション。カメリ劇場の制作の方から、今日ネタニヤ(テルアビブの近郊のリゾート地)で自爆テロが発生、5名死亡、40人負傷、というニュースを聞かさせる。カメリ劇場の国内ツアー班は、テロの起こった現場のすぐ近くで公演をしていたらしいが、中止にするかどうかでもめにもめ、結局続行しているとのこと。しかし、こういうニュースは、ここテルアビブでは、まさに数字の世界に過ぎない。ほとんど何のリアリティもないほど、劇場に人は集い、日常生活は続行する。

20時30分。カメリ劇場が制作した現代オペラを観る。劇場の一番大きなホールが満杯になるほど、一体イスラエルのどこに現代オペラファンがいるのだろうと思ってしまうほどの盛況ぶり。現代オペラでもひるむことなく、つくり手も受けて手も果敢な姿勢は凄いものがある。
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by smacks | 2005-12-05 23:12 | ■TIF06-イスラエル

ジャッファで考えたこと

朝は7時には自然と目が覚めるほどの早起き。時差ぼけに感謝。部屋から無線LANでネットが繋がるのでひととおり仕事を片付けてから、一人、ジャッファへ歩く。遠方に見えるのがジャッファの港。
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ガラクタ市を堪能。まさにここは筆者が知るディープ・アラブワールド以外の何ものでもない。住民のほとんどは、イスラエルが建国される前かにジャッファに暮らしている、アラブ人たちである。人々は当然アラビア語を話しているが、学校教育ではヘブライ語が義務付けられているそうだ。
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戻りながらまた海岸をひたすら歩く。この海岸線をずっと歩いていくとベイルートに辿り着くなあ、などと考えながら。この美しい地中海、国境を気にすることなく行き来できる日は来るのだろうか。

11時。ヤスミンのインタビューby 乗越氏をコーディネート。乗越氏はヤスミンの「ストロベリー」以前の4作品をすべて見ている唯一の日本人という貴重なお方で、今回是非にとインタビュアーをお願いした。これまでの作品から「ストロベリー」へと至る創作の変遷を伺うよい機会となる。

ヤスミン曰く世界一おいしいホンモスを食しに、またまたジャッファのアラブ街へ。そもそもジャッファはヤスミンのお膝元、ホームベースなのだ。ヤスミンに「アラビア語できるの?」と聞いたところ、「ホンモスを注文するときはできるわ」という返事が! ベジタリアンの彼女はこのホンモス食堂の常連らしい。しかしアラブのお兄さんたちの喧騒にまぎれて逞しくホンモスをたいあげるヤスミン、まったくイスラエル人には見えない。。。
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その後、インバル・ピントの新作の抜粋など、またダンス大小さまざまな作品を観まくるも、全体的な傾向は昨日と変わらず。
18時。ケバブを食べながら、イスラエルの若手振付家シュロミ・ビトンとの打合せ。青森県立美術館で予定しているプロジェクトについて、まとめて打ち合わせる。ちなみにイスラエルではかなりのイケメンであるシュロミ君、両親はモロッコからの移民である。つまり文化としてのアラブ、宗教としてのユダヤ、そして国家としてのイスラエル・・・という多重のアイデンティティの中に生まれたころから生きているわけだ。ユダヤ人とアラブ人が共存するイスラエル北部の町、アッコを拠点に活動している。

20時。今回のDance Exposureの最後を飾るノア・ダールの新作。TIFで5年ほど前に招聘した振付家だが、当時はまだ留学中だった筆者には初観劇となる。

終了後、ヤスミンのところのダンサーであり、本人も振付家として活動を始めたアルカディ君、ヤスミンやノア・ダール、バットシェバなどメジャーなイスラエル人振付家にオリジナル・サウンドを提供する音楽家バレリーさん、そして明日観に行く予定の芝居の音楽を担当している若き音楽家と、今日3度目となるジャッファのクラブバー「サルーナ」へ繰り出す。道路からぱっと見、ただのガレージにしか見えないのだが、セキュリティ・チェックがある入り口から入ると、中にはお洒落なカフェ空間が広がっている。イスラエルのビール、その名も「ゴールド・スター」を飲みながら、ダンスからアート、政治、個人の問題までどんどん広がっていく。アルカディ君は、旧ソ連生まれである。両親と共にイスラエルへ移住、学校のダンスの授業などで踊っていたところを、「見出された」という。その後ノア・ダールやバットシェバで踊り、今回東京へ招聘する「ストロベリー・クリームと火薬」では、最も被虐的で重要な役割を演じていている。また今回のExposureではビデオアーティストとのコラボレーション作品を発表し注目を集めた、若手の中ではとてもユニークな存在感を放つ存在。とてもたくさんの話をして、少なくともスザンネ・デラールで紹介されているダンスを観ているだけでは知ることの出来ないイスラエルの、移民2世代目の若者たちの様々な問題意識と感覚に触れた気がした。
by smacks | 2005-12-04 23:47 | ■TIF06-イスラエル


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