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日々の仕事のこと、観劇・鑑賞記録、出張報告など、国内外の舞台芸術を中心としたアートおよびアートマネジメント全般がテーマです。
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もうひとつのチャンネル-ドキュメンタリー『壁』

カイロでの葬儀が終わり、アラファトの遺体はヨルダン川西岸地区ラマッラーに到着した。その様子は日本のTVメディアでも夜のニュースで放送されている。

しかしこれが私の見たラマッラーだろうか? あの議長府前だろうか?
メディアが恐ろしいと今日ほど実感したことはない。

メディアが伝えない現実を記すための、アート。パレスチナや中東の多くのアーティストたちは、その軸を中心に戦っている。そのひとつの素晴らしい事例が、10月1日のブログでも取り上げたドキュメンタリー映画『壁』。このたびめでたく東京日仏学院で上映されることになった。

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写真は映画配給会社 Les Films du Paradoxe 社のHPより拝借。

監督のシモーヌ・ビトンはイスラエルとフランスの国籍を持つ。1955年モロッコ生まれ、エルサレムとパリ在住。文化的にはアラブ、宗教的にはユダヤという二重のアイデンティティをもつ彼女の視線は、壁のもつ意味と歴史、現状を多面的に映し出していく。

パレスチナとイスラエルの間の壁は、政治的な障害物であると同時に、人々の生活を阻害し、空間的・精神的な広がりを遮断するものだ。そして壁を実際に目の当たりにすると、その巨大さと同時に、かつてユダヤ人たちが体験した「ゲットー」の記憶を再生産する、恐ろしい歴史の繰り返しを見ずにはいられない。

と同時に、シモーヌ・ビトンは、この壁をパレスチナ側から表象するだけでは壁は決して消滅しないという事実を誰よりも熟知したイスラエル人の一人であろう。この写真は映画の1ショットで、イスラエル側から撮ったものだ。あたかも壁がないようにもとあった風景を描いてしまうイスラエルの人々-それは罪悪感のあらわれなのか、現実の壁を直視できない逃避なのか、それとも壁の「外側」への希求なのか? イスラエル人の精神状態を分析するドキュメントも盛り込まれているこの映画は、実にクレバーなやりか方で問題の本質を扱っている。

ほとんど昼のワイドショーネタとなってしまったアラファトの死に飽き飽きしたら、ぜひもうひとつのチャンネルを見に来ていただきたい。


下記、東京日仏学院のチラシから抜粋をさせていただく。

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『壁』 Mur
監督:シモーヌ・ビトン Simone Bitton
2004年 / 108分 / 35ミリ / カラー

作品のタイトルが示すように、本作は、ある障害物をその主題にしている。2002年6月にイスラエルが、パレスチナのテロ侵入を防ぐ安全対策の装置として建設した巨大な壁である。監督のシモーヌ・ビトンの選択は、その壁を横切ったり、飛び越えられると信じたりするよりも、このカフカ的な大きな壁の両側を沿って歩き、住人たち、子どもたち、労働者たち、軍人たち、精神科医らの言葉や反応をキャメラに収めることだった。この不条理な決定に囚われた人々の言葉にこそ、この建造物を揺るがす使命が課せられている。2004年マルセイユ・国際ドキュメンタリー映画祭国際部門グランプリ受賞作品。

上映日時:2004年11月21日(日)14:30
会場: 東京日仏学院 @エスパス・イマージュ
〒162-8415 新宿区市谷船河原町15
http://www.ifjtokyo.or.jp
入場料:一般:500円
上映の1時間前より1階受付にてチケットを発売し、整理券を配布します。会場
は20分前。
by smacks | 2004-11-12 23:34 | ■TIF05-パレスチナ
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