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日々の仕事のこと、観劇・鑑賞記録、出張報告など、国内外の舞台芸術を中心としたアートおよびアートマネジメント全般がテーマです。
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10月25日:フォーギブネス@東京国際映画祭

「フォーギブネス」
ウディ・アローニ監督

イタイ・ティラン主演
<東京国際映画祭@Bunkamura オーチャードホール>

「パレスチナ人に対するユダヤ系イスラエル人からの、いまだかつてない懺悔のブラック・コメディ。ニューヨークで活躍するモダンアートの鬼才ウディ・アローニの長編デビュー作である。
イスラエルのサナトリウム。ここは1948年にイスラエル兵たちがパレスチナ人の村を滅ぼし100人のパレスチナ人が埋められた場所である。そこへニューヨークからきた愛国的ユダヤ青年が入院。パレスチナ人の少女が幽霊となって頻繁に現れ彼を苦しめるが、長期患者たちや湯例になれっこだ。やがて回復した青年はニューヨークに戻るが、少女の幽霊は再び彼の前に現れる。超ユニークな傑作。(パンフより抜粋)」

夢と現実が時間軸を逆行しながら交錯する。監督がトークで「無意識を扱う新しい形式を模索した」といっていたが、その試みはとても成功している。

もはや決して単純化することのできない歴史という現実を、「生まれながらの被害者であると同時に生まれながらの加害者」として引き受けざる得ないユダヤの若者の苦悩が、決して単純化されることなく、常に複数の交錯する物語として提示される。複数の「父親」、複数の「結末」、複数の「起こりえること」。

「政治的なことをリアルに描こうとすればするほど、現実から離れていく」と語るアローニ監督が選んだのは、すべてが夢とも現実ともいえるシュールにしてリアルな映像だった。それは美しくもあり、(おそらくイスラエル人、パレスチナ人、そして彼らと心情を共有してきた人々の)トラウマを強く喚起させるものでもあった。ホロコーストを生きのびてしまったユダヤ人のトラウマ、パレスチナ人を撃ってしまったイスラエル兵のトラウマ・・・それらはもちろんイスラエル側からの視点に基づいて描かれているが、そうとしか描くことができないジレンマの中で、それを勇気を持って描ききった監督の力作は、なんとどこよりも先に、西岸ラマラでワールド・プレミアされたということだ。それも、イスラエルがレバノンを攻撃していた、この夏に。またイスラエル国内でも、賛否両論、物議をかもす超問題作として世間を騒がせているらしい。

主演のイタイ・ティランは、テルアビブのカメリ劇場の看板俳優で、去年テルアビブで観た「ハムレット」の主演としても記憶に新しい。狂気がかったアンニュイ系ナイスガイを好演。

また、イスラエルのクラブで若者が現実逃避のため踊り狂うシーンやアラブ音楽にあわせて兵士が踊るシーンなどの振付は、あのバットシェバ舞踊団のオハッド・ナハリンが担当。

終演後のトークも、非常に素晴らしい内容だった。「フォーギブネス」=許すこと。それは同時に、「アンフォーギブネス」=許されざるものの存在も意味するのだ、と監督は言った。どうしようもない圧倒的な事実の前に、人類は許すこと以外に何ができるだろうか? と問いかけるアローニ監督の声は、人生をかけて仕事をしているアーティストの確信に満ち溢れていて、とても感動的だった。

久しぶりに、心から励まされる作品を観た。アーティストの声に、耳と閉ざしてはいけない。この映画を勧めてくれたあの方に、心から感謝を。
by smacks | 2006-10-26 01:48 | ■TIF06-イスラエル
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