smacks dialy

日々の仕事のこと、観劇・鑑賞記録、出張報告など、国内外の舞台芸術を中心としたアートおよびアートマネジメント全般がテーマです。
by smacks
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ

Smile, you are Palestinian

10月7日
快晴。朝11時ごろまで滞在先のアパートでジョージを待つ。10時ごろには迎えに来ると言っていたので若干心配したが、予想どおり今夜のバーベューの食材を買っていたとのこと。待ちながら椿さんと今回のパレスチナプロジェクトのアウトプットについて話し合う。
劇場に向かう道すがら、朝ごはんを兼ねてお菓子屋さんに連れて行ってくれる。そこで食したスィーツは、ナッツ系、チーズ系、いずれもあのアラブ菓子独特の甘さとボリュームだ。「これは、フェスティバルのウーメンズ・スタッフに、これはイチムラサンに」といってジョージが買ってくれたスィーツは、まさにてんこ盛り。大きいスーツケース持ってきてよかった。。
b0028579_1958717.jpg


劇場に入ると、ジョージのオフィスとハナのオフィスを行ったりきたりしながら、作品について、マネジメントについて議論は尽きない。特にアルカサバの経営状態について、その危機的な状況について。このままでは劇場が閉鎖されるのも時間の問題だとジョージは言う。毎月、役者に対するギャラを除いた劇場のランニング・コストは40,000USD.=約440万円。16名ものパーマメント・スタッフと、これだけの劇場&シネマテークがあれば、格安の金額ではあるが、それでも劇場とシネマテークのチケット収入だけではまったくまかなうことは不可能。国内に助成金システムがない以上、外部の援助に頼るしかない。昨日の芝居を見たパレスチナ国立劇場は、ノルウェー政府から毎月のランニング・コストを支援してもらっているという。ならばアルカサバも日本をはじめとする外国からの援助で何とかならないものか。今度日本に来日したときは、なるべく多くの潜在的支援者に会いたい、なるべく多くの公演をしたい。彼らはそう力説した。

椿さんはテクニカルのモアッズと舞台上でがんがんビジュアルとテクニックについて議論を戦わせていた。彼は照明も音響も舞台装置も担当しているため、芝居のテキストと役者以外についてはすべてを掌握している。モアッズ君は、今回の私たちのパレスチナ訪問のキーパーソンだ。ジョージが語るパレスチナや劇場、芝居とは別の視点で、そっと私たちに語りかける。

ジョージのオフィスでジャーナリストからインタビューを受ける。今回の日本・パレスチナの共同制作をなぜ企画したのかという質問だ。ジャーナリストはパレスチナで唯一文化専門の記者さん。アラブ世界のアート情報を集約した唯一のアートジャーナル、ZAYAYAにもパレスチナから記事を寄せる唯一のジャーナリストだ。もちろんあのピエール・アビザーブの親友でもある。今回の記事はぜひアル・ハヤート誌に掲載したいとのこと。3人の写真も撮る。

7時からは最新作「Smaile, you are Palestinian 」の公演。だが7時になっても会場の観客はまばら。「ここでは7時開演といったらみんな7時に家を出てくるんだ」。やっぱり。うすうすとは感じていたが、今日の公演は私のパレスチナ滞在にあわせて行ったものだった。客の数も多くはない。せいぜい100名といったところだろう。ぜひこの作品を東京で、共同制作する新作と一緒に上演してほしい。これが彼らの明白なメッセージだった。ジョージはこの作品について絶対的な自信を持っているようだ。ジョージナとカーメルの二人が扮するパレスチナ・カップルが、壁の建設や外出禁止令など厳しい状況下で、どんな夫婦にもありがちなお金の問題、子供の問題などを乗り越えられずに破局するという、それだけ聞くと実に絶望的なストーリーだが、役者たちの演技はいつもどおり実にユーモラスでしなやかで、テキストの随所には強烈なアイロニーが散りばめられている。アルカサバ独自の手法は健在だ。

それから役者さんたちや劇場のスタッフがジョージの豪邸に集合。私たちの歓迎と芝居の打ち上げを兼ねたバーベキュー・パーティだ。鳥モモの山。ハバッシュ(七面鳥)の山。ケバブの山。それらをテラスの巨大なバーベキューでモアッズが黙々と焼く。朝からバナナ1本で、椿さんとディープな議論をし、芝居の照明・舞台・音響を一人でこなし、そして山のような肉を黙々と焼き続けるモアッズ。なんてオトナな彼。偉すぎる。
食べながら、東京公演のDVDを観る。さすがにシアターTVのクルーが撮っただけあり、迫力の舞台+日本語字幕にみんな見入る。というか、このテレビって一体何インチ? ホームシアターとはまさにこのことだ。

お酒も入って一通り盛り上がったところで、私たちはまた目を覆うようなニュースを手にする。イスラエルとエジプトの国境付近、紅海に面するタバというリゾート地のホテルで爆破事件が発生、30名以上が死亡、100名以上が負傷した。ヒルトンホテルだ。血まみれの人々が次々と担架で担ぎ出される映像が繰り返される。
思えば私たちがここにきてたった4日、初日の夜にラマラで銃撃、毎日のようにガザで子供を含む市民が多数死亡、そして今日はヒルトンホテルでのテロ。
が、そんな厳しい現実を受け止める当人たちは、そんな最低の状況をサバイブするために、不謹慎なまでに洗練されたドライなギャクを連発している。そのブラック・ユーモアの質と量はすさまじい。
by smacks | 2004-10-07 15:28 | ■TIF05-パレスチナ
<< イスラエルからの出国 聖地を分断する「壁」 >>


人気ジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧