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日々の仕事のこと、観劇・鑑賞記録、出張報告など、国内外の舞台芸術を中心としたアートおよびアートマネジメント全般がテーマです。
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クレイジーな国の、クレイジーな現実

今日から演劇プログラムが始まる。今回のTheatre Exposure のプログラム・ディレクター、エラン・バニエル氏は、90年代にあのパレスチナのアルカサバ・シアターのディレクター、ジョージ・イブラヒムと共にパレスチナ・イスラエル共同製作作品「ロミオとジュリエット」を演出した演出家としてのキャリアを持つ方。当然ジョージとは今でも「やあ元気?」と携帯電話で連絡を取り合える仲。その後、エルサレムのハーン劇場、アッコ演劇祭などのディレクターを務め、またヤスミン・ゴデールやインバル・ピントなどイスラエルの若手振付家に創作と発表の機会を与えてきた功績はとても大きい。そんなバニエル氏によるチョイスだけあり、おのずと期待も膨らむ。

ダンス・プログラムとはまったく違った仕切りで、海外からの総勢30名ほどの招聘者をまとめてバスに乗せて各劇場へ訪問、観劇するスタイル。
最初は今回の招聘元であるイスラエル外務省の方の挨拶。「このクレイジーな国の、このクレイジーな現実を反映した演劇を、ぜひご堪能あれ」。。。外務省の官僚にしてはシニカルユーモアたっぷりなスピーチで、ますます期待が膨らむ。

10時。クリッパ・シアター。日本にも何度か来ている、舞踏系のフィジカル・シアター。
11時。演劇評論家による、イスラエル演劇に関するレクチャー。ニューヨーク仕込みの英語は早かったが、とても分りやすく整理され、これからの観劇の傾向と対策まで教えてくれる素晴らしい講義。

お昼。テルアビブ市が誇るレパートリーシアター、カメリ劇場へ。
14時。「プロンター」観劇@カメリ劇場。まだ20代後半の若い女性演出家ヤエル・ローエンによる作・演出。イスラエル人とパレスチナ人、ユダヤ人とアラブ人が混成する若い俳優やスタッフによるコラボ作品という。劇場に入る入り口では、チケットもぎりの代わりに、イスラエル兵の格好をして銃を下げた俳優たちが、観客ひとりひとりのパスポートチェックを行う。(筆者、一瞬自分のパスポートでは劇場にいれてもらえないのではと焦る。)
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まさに検問所。そして舞台美術は、なんと壁! やはりキャスターでパーツごとに移動可能な、我々の「壁」にそっくりな舞台美術に思わずのけぞる。芝居は、第2次インティファーダ以降のイスラエル・パレスチナ問題を日常として生きなければならない人々の、双方のロジック、双方の悲劇、双方の矛盾が次々と場面をかえて描かれていく。壁によって生活が分断された家族、子供をイスラエル兵に殺された夫婦、自爆テロにおびえアラブ人を疑うバスの乗客たち、兵役に行くのを拒み家のベットから離れられない若者・・・・などなど。極めてリアルな問題を、とりあえず全部舞台に乗せてみたという、フレッシュで正直な演出は、時としてやや稚拙でこなれていない印象を受けるが、それにしてもとても勇気のある作品、そして観るものの心に強烈なインパクトを与える作品だったことは確かだ。しかも作品はアラビア語、ヘブライ語がそれぞれ字幕表記される徹底ぶり。しょっぱなから相当面白くなってきた。

16時30分。「ハムレット」観劇@カメリ劇場。もともカメリ劇場はテルアビブ市立のレパートリーシアターだが、05-06年のレパートリーの看板のひとつが、このヘブライ語新訳による「ハムレット」。これが驚くほど素晴らしい舞台だった。カメリ劇場の看板俳優たちの演技は卓越していて、とくにハムレットを演じている彼の演技は最高。今までに知るどんな「ハムレット」よりもインパクト大。ダッフルコートにジーンズ、プーマのスニーカー、でもってソニーのヘッドフォンをぶら下げてテクノを聞きまくる。360度回転式のイスに座った200名ほどの観客は、イスでくるくる回りながら、四方八方で行われる舞台を追うことができる。またテキストはシェイクスピアの原文に忠実でありながら、演出によってここがイスラエルという場所であることを強烈に意識させる仕掛けが要所要所に散りばめられている。クローディアスは最後、王座ではなく演説台の上でマイクを口に突っ込まれ死亡、すべての悲劇の後にやってくるフォーティンブラスはイスラエル軍としか見えない軍服を着ている始末。。。

ディナー・レセプション。カメリ劇場の制作の方から、今日ネタニヤ(テルアビブの近郊のリゾート地)で自爆テロが発生、5名死亡、40人負傷、というニュースを聞かさせる。カメリ劇場の国内ツアー班は、テロの起こった現場のすぐ近くで公演をしていたらしいが、中止にするかどうかでもめにもめ、結局続行しているとのこと。しかし、こういうニュースは、ここテルアビブでは、まさに数字の世界に過ぎない。ほとんど何のリアリティもないほど、劇場に人は集い、日常生活は続行する。

20時30分。カメリ劇場が制作した現代オペラを観る。劇場の一番大きなホールが満杯になるほど、一体イスラエルのどこに現代オペラファンがいるのだろうと思ってしまうほどの盛況ぶり。現代オペラでもひるむことなく、つくり手も受けて手も果敢な姿勢は凄いものがある。
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by smacks | 2005-12-05 23:12 | ■TIF06-イスラエル
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