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日々の仕事のこと、観劇・鑑賞記録、出張報告など、国内外の舞台芸術を中心としたアートおよびアートマネジメント全般がテーマです。
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Who's afraid of representation?

滞在しているホテルは、レバノン内戦中に国外からのジャーナリストが集められていたというホテルで、そのせいかどうかは知らないが、やたら通信状態がよい。部屋から簡単に高速インターネットに接続できる。。。ため、ついつい仕事をしてしまう。

チュニジアのダンスフェスティバルのディレクター、パレスチナのハルサカキーニ文化センターの元ディレクターの方とミーティングをしているうちに日が暮れて来る。。。このままでは今日もベイルートに来た実感が沸かないまま終わってしまう! ということで、ちょっとだけお散歩に。地中海まで歩ける距離!
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郊外のギャラリースペースで行われる展覧会のオープニング。今日から始まるHome Works III のオープニングも兼ねている。かつてパレスチナ難民キャンプがあった郊外の工業地帯の、一見工場としか見えない建物の4Fに、秘密のアジトのように、広大なギャラリースペースはある。
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Askal Alwan―レバノン現代芸術協会は、クリスティーヌ・トーメさんという超やり手のレバノン人キュレーターがディレクターを務めるNPOであり、その活動はレバノン在住・あるいはレバノン出身の先鋭的なアーティストを発掘し、プロデュースし、海外に紹介し、各種出版やシンポジムまで、多岐に渡る。TIF2004で招聘したレバノンのアーティスト、ラビア・ムルエもこのNPOの存在がなければ今世界のトップアーティストにはなっていなかっただろう。

そのラビア・ムルエによる新作「Who's afraid of representation?」レバノン初演。400席のホールは超満員、立ち見をぎゅうぎゅうに入れても会場に入りきれない人が大勢出るほどの、大盛況。入場料は無料。というのも、検閲局に申請をしていないので公式な公演扱いをすることができないからだ。
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ベルリンのヘッペル・シアター(HAU)、パリのCND(国立ダンスセンター)、ウィーンのTanzQuartier Wien による共同製作。2005年2月ベルリン初演。
2005年2月といえば、レバノンでハリリ首相が暗殺されたのが2月14日。
舞台には映像を投射するスクリーンと、1人がけの小さなテーブルと椅子だけ。ラビアは椅子に座り、リナは机の上のカタログを手にする。任意に開いたページに掲載されているアーティストの名前を読み上げる。例えば、マリーナ・アブラモヴィッチ。ページ数は25ページ。リナはスクリーンのほうへ向かい、そこに彼女のシルエットがリアルタイムに映し出される。ラビアは「スタート」といってストップウォッチを押す。25秒間、リナはアブラモビッチのディスクールを読み上げる。25秒が経過するとラビアは「ストップ」とこのプレイを中断させ、リナはまた机のほうに戻ってくる。このプレイを基本として、20世紀の偉大なアーティストの名を借りて次々と展開する極めて挑発的なテキストに、観客は時に爆笑し、時にしんと静まり返る。英語の字幕を追ってもなかなかピンと来ないのは、やはりレバノンのローカルなものへのコノテーションが多いからだろう。しかし、こういった理解のボーダーラインを超えることができないもどかしさよりも、この舞台の持つ極めて強度な芸術そのものへの批評性、政治への批評性、そして社会への問題意識とそれをアートとして巧妙に、しかも脱力のまま昇華させているスマートさに、観客は一瞬も途切れることなく集中力を張り詰めさせる。その観客の連帯感は、今、ここベイルートで、この作品を共有することの切実さというものに由来するに違いない。
と、そのとき突然、リナのシルエットを映し出しているはずのスクリーンに、いわゆるDVカメラのバッテリー切れの青い画面が!! うわああー・・・・ 2~3分はそのままラビアの語りが続いたが、そのまま続行は演出上不可能となり、いったん中断してラビア、DVカメラに走る・・・・。突然の停電などはベイルートではよくあることだそうが、なぜDVカメラだけ・・・・? っていうか、コンセントに繋いでなかった?? 結局延長コードを持ってきてDVカメラに繋ぐという、超ローテク作業に突入。その一部始終を観客が見るという、ベイルートなら微笑ましいが、東京だったら切腹もののアクシデントにもめげず、舞台はますますラジカルに、ますますスマートな過激さと挑発さに満ちていった。「ビオハラフィア」「Missing the Emploiee」とあわせ、3部作として、それぞれに相補的な関係性にあるこの作品、まさにこういう作品を観たかったのだと思った。超満員の観客もスタンディング・オベーションで熱狂的に答える。ここ、ベイルートで、このような作品を観られることの、奇跡のようなものに感動する。
終わったあと、ラビアが言った。「あの程度のアクシデントで済んでよかった・・・スタッフは誰も最後まで問題なく上演できるとは思ってなかったから。。。みんなミラクルだと言っているし」・・・・ゆ、ゆるい。

打ち上げでは、D.Iの映画監督エリア・スレイマンや主演女優のマナル、来週から始まる東京フィルメックスに参加する映画監督カリル・ジョレイジュ&ジョアン・ハジトゥーマといったアラブ世界の逞しき表現者たち、さらに世界中から集まった多くの劇場関係者が集まり・・・でもやっぱりゆるい感じが楽しい。
by smacks | 2005-11-17 23:32 | ■TIF07-レバノン
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