「ペ」め~!! 怒涛のソウル22時間 (中編)

*ぜひ下の前編からお読みください。

朝5時起床。6時30分のスカイライナーで成田へ向かう。最後の手段は直接空港の大韓航空カウンターでチケットを購入すること。さすがに海外出発当日にチケット持たずに成田へ行くなんて相当の度胸と覚悟がいる。冷や汗たらり。
結局、昨日Janiceが入れていた予約がまだ生きていて、晴れてチケット購入完了。ふぅ~。っていうかフライト直前でも国際線のチケット買えるんだ。まあ正規料金なので値段は張る。

飛行機は12時にインチョン空港に到着。しかし入国審査には日本人の長蛇の列、12時半過ぎにようやくタクシーに飛び乗る。セミナーが始まるのは13時半。直接会場まで行けば何とかなるか…。と思いきや、今度はひどい交通渋滞に巻き込まれる。もうここまできて間に合わなかったどうしよう、どれだけの人に迷惑がかかるんだろう、いったいどういう会議で何をしゃべらされるんだろう、っていうかなんで自分はこんなことに巻き込まれて昨日から走り回ってるんだろう? …緊張と疲労と怒りが入り混じり、かなり気分が悪くなる。
この怒りの矛先を誰に向けていいのか…そのとき、私は今回の不条理な騒動のすべての元凶は「ペ」だ、と自分の心に言い聞かせた。「ペ」さえいなけれりゃ、少なくとも航空券はスムーズに予約できて入管もあっさり通れて、こんなに走ったりしなくてもよかったはずだ~!!
「ペ」め~!!(怒) お前のその微笑みが気持ち悪すぎるぞ~!!
怒りのボルテージがいったん極限まで上がった後は急に落ち着いた気分になって、遅刻しようが怒られようがどうでもいいやという心理状態になっていた。タクシーが会場のCOEXに到着したのは14時。もうとっくにセミナーは始まっている。
すると建物の2Fから私の名前を呼ぶ声が。Janiceだった。
ソウル財団の人々の「やっと、来たんですね」的な微妙な反応にすごすごと頭を下げつつ、会場ホールのスピーカー席に座らされる。上海のフェスティバルのスピーチが終わっていなかったのが不幸中の幸いだった。
このセミナーのテーマは「フェスティバルと都市マーケティング:東アジアの事例」。おいおい、なんでTIFにこんなテーマを振るんだよ、うちは都市開発や観光には一切関係ないよ、と前々から言っているのだが…
SI-Danceのディレクター李さんが私のことを紹介してくれる。韓国語なので全く何を言っているか分からない。でも気分はある種の躁状態になっているので、市村さんが書いた原稿をもとに絶好調に話し出す。
が。 100人はいるだろう観客たちが口々に「日本語の同時通訳が聞こえない」と言い出す。そこにJaniceが飛んでくる。「スピーチは英語でお願いっ!!日本語の通訳は容易してないの」ひょえ~~~そんなこと一言も聞いてないよう。日本語-韓国語の通訳つけるっていったじゃん!!! 「それは市村さんが来たらという意味で、あなたは英語しゃべれるでしょう?」 ちょっと待て! 日常会話とスピーチを一緒にするな、準備しないでアドリブの英語スピーチなんかできるかい! 
「絶対、無理。英語じゃヤダ」と粘ること30秒。一瞬、この際英語でもなんとかなるかと思ったが、せっかくこんなに苦労して来たのにたかが語学のせいで意味のないことを話すことこそ無意味と思いとどまっていたところ、幸運にも会場に日本語が堪能な人がいて、通訳を買ってでてくれることに。うわ~救われた~
こうなってくると、どうせ通訳もアドリブなのだから、こちらもアドリブ&ウケ狙いでいくしかないのだ。最後の最後までこの席に座れるか分からなかった理由を「ペ」のせいだと言ったら案の定大うけ。
フェスティバルが都市のマーケティングや観光に関与するのは、都市にグローバルな文化政策があってこその話だ。東京都から支援を受けず、よってなんら東京都の文化政策に対して責任を負っていない我々TIFにとって、このテーマはあまりにも意味がない。アートを都市開発の手段として位置づけ利用する立場(地方自治体や財団、企業)と、自分がやりたいアートをするためにアートの社会貢献を口実としてお金や機会を引き出す立場(アートのプロフェッショナル)。その両者が同じテーブルについてビジョンを共有しない限り、フェスティバルが地域開発に貢献することなどありえない。こういうテーマについて話させたいなら、アヴィニオンとかエジンバラのディレクター呼べよ・・・と思う気持ちを抑えつつ、TIFの本音を30分ほどしゃべり続ける。
アドリブ通訳さんが優秀だったのか、お客さんの反応はとても良く、うなずきながら熱心に私の話を聞いてくれる若い学生さんもいて、話すのは楽しかった。

が、全体的にはこのセミナー、日本語、韓国語、中国語、英語が入り乱れ、お互いのディスカッションは成り立たず…っていうかレベル低すぎないかい? 少なくともセミナーの内容について誰が責任を持つのか、その所在をはっきりさせようよ、と思った。私たちはJaniceからテーマについて原稿・スピーチ依頼を受けていたが、司会者やほかのパネラーについては全く知らされていなかったし、原稿を出したあともそのフィードバックやアーティキュレーションもなかった。結局いつものパターンで、オーガナイズをする担当者は形式を整えることと事務に終われ、内容の核心に対しては責任が空白状態になってしまう。

疲れた。夜のショーケースの前に食べたサンゲタンだけが唯一の慰めだった。
明日の朝は6時起き7時出で帰国しなければと思うと、ショーケースやらレセプションやらの後はもう何もする気になれなかった・・・
by smacks | 2004-11-27 01:33 | ■アジア出張